小児胸部撮影に生殖腺防護は必要か

過去において、胸部撮影の際には生殖腺防護が義務ずけられていました。ところが近年、胸部撮影の際プロテクター不要論が出始め、病院、放射線技師間によって判断に食い違いが出始めました。そして近年になり、学会からプロテクター不要の方向性が出され、一件落着となったのです。しかしながら、プロテクター不要論は一般市民に簡単に受け入れられず、物議を出しております。そこで、この記事を読んでいただき、だれもが納得できる生殖腺防護論について話いたします。

小児胸部撮影の必要性

プロテクターをつける目的は、生殖腺の防護であり、特に女性や子供には必要不可欠と言われて
来ました。しかし現在では、必要ないと言われています。しかし、町のお母さんは不安でたまりません。そのお母さんの不安を取り除くには、放射線技師にプロテクターを付けるよう要求することです。
そして、ある日、ある時「この病院では胸部撮影時には必ずと言っていいほど腰にプロテクターをつけてくださいます。しかし、私の家の近くの病院ではプロテクターをつけてくださいません。付けてほしいとお願いしてもいいのでしょうか」との質問を受けました。胸部撮影は風邪をひいたとき、喘息による呼吸困難に陥った時に撮影するのが、一般的であります。他には、骨折等で手術をしなければ成らない時に、麻酔の医師のからの要望で写真を撮ることもあります

小児胸部撮影の時「生殖腺防護する、しない」賛否両論の果て

近年、日本放射線技術学会地方部会において胸部撮影の際、プロテクターは不必要なのではないかという意見が出されました。これまでにも、胸部撮影時の防護に関しては「防護する、しない」の賛否両論があり、各施設はもとより放射線技師間の間でも、その対応に違いが生じておりました。その原因はこの数十年、防護効果に関するⅩ線量のデータが十分でないこと、防護の適応を判断する明確な判断基準がなかったことにあります。そうしたことから、施設ごと、もしくは放射線技師の主観的な判断で防護の適、不適が決定が下されておりました。その後、日本放射線技師会では「医療被曝ガイドライン」という本を出版し、胸部撮影においては、照射野絞りを適切に行えば生殖腺防護プロテクターは必要ないという一つの方向性を示しました。プロテクターを不必要とした根拠は被ばく線量の精度の高い測定であり、コリメーター(Ⅹ線ビームの広がりや形状を制限し、目的の方向へ平衡に整えるための遮蔽装置)の改善でした。Ⅹ線絞りは鉛などのⅩ線を吸収しやすい素材でできており、画質の向上や被ばくの低減に必要不可欠な役割を十分に果たしております。   その結果、胸部撮影における被ばく線量は成人、子供かで異なりますが、0.03~0.06mSv(mSv:人間がどれだけ放射線から影響を受けたか、被ばくの大きさを表す放射線線量の単位)ということになりました。過去においては照射線量のみが重点を置いていたのですが、プロテクターを通した線量測定をも可能にし、その結果を踏まえてプロテクター不必要となったのです。

小児胸部撮影において生殖腺防護は無意味であるという根拠

しかしながら、反論がないわけではありませんでした。それは散乱線(放射線が物質[人体]に当たった際に進行方向を変えて飛び出してくる二次的な放射線)の存在です。「なぜ、この散乱線を無視できるのか?」との疑問が出されたのです。それは、人体が一番の散乱体であり、体内に入った散乱線を防ぐことはできません。ICRP(国際放射線防護委員会)のPublication84では、「生殖腺吸収線量100mSv以下の線量では奇形、発がんの原因が放射線によるものなのか、自発発症のものなのかを分離できない」と明言しています。今回の測定の結果、生殖腺吸収線量0.002mSvはこの値の5万分の1の線量である。これは、普段私たちが手にしている放射線測定器で測れるギリギリの線量であり。広義の意味ではBG(バックグランド)レベルと同じといえます。つまり、BGレベルの線量を5%少なくするために鉛プロテクターをしても、散乱線が受ける線量は、自然に受ける線量と有意差はないと結論ずけられたのです。

なぜ、生殖腺防護をする病院としない病院があるのか

病院によっては、プロテクター使用の可否にはバラツキがあります。大きな病院ほどプロテクターを使用しているのではないでしょうか。患者さんによっては、「近所の病院ではプロテクターをしないのに、なぜこの病院はするのですか」質問する患者さんもいます。我々放射線技師はいずれの場合においても説明は致しますが、「なぜプロテクターをするのか」の方が、説明は簡単です。私の答えは、「プロテクターはなくても大丈夫です。でも付けておいたほうが安心でしょ」この一言で十分です。説明時間の短縮は、患者さんへの待ち時間短縮なっているのです。プロテクター付けない場合、説明を受けたとしても不安な一夜を過ごすこともあるでしょう。それは、放射線なるものは、目では見えない、色が付かないからなのです。少しでも、不安を感じるあなたは、放射線技師にプロテクターを付けるよう要求することで、安心して眠れることができます。

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